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東京地方裁判所 平成6年(ワ)19785号 判決

原告

東京海上火災保険株式会社

被告

フオスター運輸株式会社

主文

一  被告らは、各自、原告に対し、金一〇八二万〇六一二円及びこれに対する平成六年一〇月二〇日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

二  原告のその余の請求を棄却する。

三  訴訟費用は、これを四分し、その三を原告の負担とし、その余は被告らの負担とする。

四  この判決は、第一項に限り、仮に執行することができる。

事実及び理由

第一請求

被告らは、各自、原告に対し、金五四三三万五三七四円及びこれに対する平成五年一一月一五日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

第二事案の概要

一  本件事故の発生(当事者間に争いがない)

1  事故日時 平成二年七月二〇日午後二時ころ

2  事故現場 神奈川県津久井郡相模湖町小原五六五先高速自動車国道中央自動車道西宮線(以下「本件道路」という。)下り四二・二キロポスト付近道路

3  被告車 事業用大型貨物自動車

運転者 被告二俣正人(以下「被告二俣」という。)

所有車 被告フオスター運輸株式会社(以下「被告会社」という。)

4  北山車 事業用大型貨物自動車

運転者 訴外北山保(以下「訴外北山」という。)

所有車 訴外塩谷運輸建設株式会社(以下「訴外塩谷運輸」という。)

5  西本車 事業用普通貨物自動車

運転者 訴外西本

6  事故態様 北山車が西本車に追突した後、北山車が、横向きで、本件道路を塞ぐ形で本件現場付近に停止し、北山車に追突されて逸走した西本車が、停止した北山車の手前で停止したところへ、後方から進行して来た被告車が西本車に衝突し、西本車を前方に押し出して北山車に左側面に西本車の右前部を衝突させ、その結果、訴外西本は、脳挫傷、右鎖骨骨折、頭蓋骨骨折等の傷害を負い、平成四年六月一日、症状固定となり、自動車損害賠償保障法施行令別表後遺障害等級表(以下「後遺障害等級」という。)一級三号の後遺障害が残存した。

二  責任原因(当事者間に争いがない)

1  訴外北山

訴外北山は、前方を注視して進行すべき注意義務があるにもかかわらず、これを怠つて進行した過失によつて本件事故を起こしたのであるから、民法七〇九条により、訴外西本に生じた損害を賠償する責任を負う。

2  被告二俣

被告二俣は、前方を注視して進行すべき注意義務があるにもかかわらず、これを怠つて進行した過失によつて本件事故を起こしたのであるから、民法七〇九条により、訴外西本に生じた損害を賠償する責任を負う。

3  被告会社

被告二俣は、被告会社の従業員であり、かつ、本件事故は、被告二俣が、被告会社の業務に従事中、その過失によつて発生させたのであるから、被告会社は、民法七一五条により、かつ、被告会社は、被告車を所有して、運行の用に供していたものであるから、自動車損害賠償保障法三条により、被告二俣と連帯して、訴外西本に生じた損害を賠償する責任を負う。

4  共同不法行為

訴外北山の右過失と被告二俣の右過失は、いずれも訴外西本の負つた後記損害と因果関係があり、かつ、客観的に共同関連した関係にあるので、訴外北山と被告二俣は、民法七一九条により、連帯して、訴外西本に生じた損害を賠償する責任を負うので、結局、訴外北山と被告らは、連帯して、訴外西本に生じた損害を賠償する責任を負う。

三  訴外西本の損害額(甲一九ないし七一、証人森雅彦の証言)

1  治療費 三六万六七七一円

2  看護費 六五四万四二二五円

3  雑費 六八万三〇〇〇円

4  装具費等 三五万三六〇三円

5  住宅改造費 九一万二四九〇円

6  介護費 二五一四万二八七九円

7  休業損害 六二三万五一〇七円

8  逸失利益 四二七一万五六八八円

9  傷害慰謝料 三五〇万円

10  後遺障害慰謝料 二〇二八万一六一一円

11  合計 一億〇六七三万五三七四円

四  原告による損害賠償金の支払い(甲四の一及び二、七二、証人森雅彦の証言)

1  原告は、遅くとも本件事故までの間に、訴外塩谷運輸との間に、保険の目的を前記北山車、保険金額を対人一億円、本件事故時を保険期間内とする保険契約を締結した。

2  原告は、右保険契約に基づき、平成五年四月二〇日ころ、訴外西本に対し、本件事故に基く損害賠償金として一億〇六七三万五三七四円を支払つたので、原告は、訴外北山の被告らに対する求償請求権を代位取得した。

五  争点

原告は、本件事故における被告二俣の過失割合は九割が相当であり、仮にそうでないとしても、少なくとも七割は下らないと主張し、被告らに対し、共同不法行為者に対する求償権に基づき五四三三万五三七四円を請求したのに対し、被告らは、被告二俣の過失割合は一割ないし最大でも二割であると主張している。

第三争点に対する判断

一  被告の負担部分について

1  前記争いのない事実、甲一、五ないし一三、乙二、訴外北山の証言、被告二俣本人尋問の結果によれば、以下の事実を認めることができる。

(一) 事故現場の状況

本件事故現場は、八王子方面と大月方面を結ぶ高速自動車国道中央自動車道西宮線の下り四二・二キロポスト付近であり、片側二車線のアスフアルトで舗装された道路である。本件事故現場付近は直線で、視界は良好であり、速度は八〇キロメートル毎時に規制されている。本件事故現場付近は、本件事故直前には大雨が降つていたが、本件事故当時は、雨はやんでおり、路面は湿潤し、スリツプを起こしやすい状態であつた。

(二) 本件事故直前の本件事故現場の状況

本件事故の直前、北山車及び被告車の前方の中央分離帯側車線(以下「第二車線」という。)上を走行していた訴外佐藤忠泰運転の普通貨物自動車(以下「佐藤車」という。)が、左側車線(以下「第一車線」という。)に進路を変更する際、回転しながら滑走し、佐藤車は、左路外のガードレールに衝突し、第二車線上に停止した。佐藤車の後方を走行していた普通貨物自動車(以下「四トン車」という。)は、佐藤車との衝突を避けようとして滑走し回転し、車両前部を八王子方面に斜めに向けて横向きに停車し、また、同様に、後続のタンクローリー車が第一車線と第二車線の区分線を跨いで停止した。そのため、第二車線上の後方を走行していた訴外花島徹基運転の普通乗用自動車(以下「花島車」という。)と訴外村上浩一運転の普通貨物自動車(以下「村上車」という。)が、右タンクローリー車の後方に停止しようとして、減速して進行した。さらにその後方から進行してきた訴外川田等運転の普通貨物自動車(以下「川田車」という。)は、前方車両との衝突を避けようとした結果、道路左側の路側帯に、前部を八王子方面に向けて停止し、第一車線を走行していた西本車は、第一車線上に、前部を大月方面に向けて停車した。

(三) 北山車の進行状況及び衝突状況

(1) 北山車は、事業用大型貨物自動車で、約七トンの重量の荷物を載せ、八王子方面から大月方面に向け、時速約一〇〇キロメートルで第一車線を進行していた。訴外北山は、本件事故現場手前で、前方を走行する被告車を追い越した後、第一車線に戻り、北山車をそのまま時速約一〇〇キロメートルで第一車線上を進行させていた。訴外北山は、本件事故現場手前で、自車の左右のサイドミラーを見て後方を確認したため、前方の注視を怠つた。その結果、西本車の後方約四三・九メートルの地点に至つて初めて、西本車が第一車線上に停止しているのを確認し、このままでは停止できずに西本車に衝突すると判断し、約一九・三メートル進行した地点で、ハンドルを右に切ると同時にブレーキをかけたが間に合わず、約二四メートル進行して北山車の左前部を西本車の右後部に追突させた。北山車は、西本車に衝突した後、その衝撃で自車後部を右前方に回転させながら西本車を追い越して滑走し、第二車線上で停止しようと減速していた村上車の後部に衝突した。村上車は、西本車に衝突された反動で、前方を走行していた花島車の後部に衝突し、右路外に停止した。さらに、北山車は、村上車に衝突した衝撃で横転した上、前方に滑走を続け、村上車に追突された花島車に衝突した後、西本車に衝突した地点から約七二・六メートル進行した地点で前部を第一車線左の路側帯部に、後部を第二車線右側の路側帯部に、それぞれ進入させて本件道路を塞ぐ形で本件現場付近に停止した。訴外北山は、北山車が西本車に衝突した衝撃で、意識を失つた。また、北山車は、本件事故の際の衝撃で、運転席部分と荷台部分が分離した。

(2) 西本車は、北山車に追突された後、その衝撃で左前方に約一一・九四メートル進行し(四二・一キロポスト地点から、北山車が西本車に衝突した地点までの距離(三三・三メートル)と西本車が川田車に衝突した地点までの距離(五三・七メートル)の差の二〇・四メートルから、西本車の車長八・四六メートルを控除した距離)、西本車の左前部を左前方の路側帯に停止していた川田車の左前部に衝突させ、川田車は、その衝撃で、左路肩のガードレールを擦りながら後方に約九・三一メートル移動して(四二・二キロポストと四二・一キロポストの距離である一〇〇メートルから、四二・一キロポスト地点から西本車が川田車に衝突した地点までの距離(五三・七メートル)と四二・二キロポストから川田車が停止していた地点までの距離(三二・三メートル)と川田車の車長四・六九メートルを控除した距離)、左路肩に停止した。西本車は、川田車に衝突した後も、北山車に追突された反動で、自車後部を右前方に回転させながら前方に約三二・一メートル進行し(四二・二キロポストと四二・一キロポストの距離である一〇〇メートルから、四二・一キロポスト地点から西本車が川田車に衝突した地点までの距離(五三・七メートル)と四二・二キロポストから西本車が停止していた地点までの距離(約一四・二メートル)を控除した距離)、西本車を追い越して停止した北山車の約三・八メートル手前で、前部を第一車線側に、後部を第二車線側に向けて停止した。

(四) 被告車の進行状況及び衝突状況

被告車は、事業用大型貨物自動車で、約一〇トンの重量の荷物を載せ、八王子方面から大月方面に向け進行していた。被告二俣は、第一車線上を時速約一〇〇キロメートルで進行中、本件事故現場手前で北山車に追い越され、被告車を追い越した後、第一車線に進入してきた北山車の後方を走行していた。そして、本件事故現場手前の地点で、約五五・一メートル前方を走行していた北山車が急に右に流れるようになつて第二車線に進入して行つたので、危険を感じ、約二四・六メートル進行した地点でハンドルを切りながら急ブレーキを踏んだが、路面が湿潤していたため、ブレーキはほとんど利かずに逸走し、被告車は、ほとんど減速しないまま約六二・六メートル進行して、前方で停止していた西本車の左側面に被告車右前部を衝突させ、その反動で西本車を前方に押し出し、西本車は、約三・八メートル前方に押し出され、同所に横転して停止していた北山車に衝突し、被告車も西本車を押し出しながら進行して、西本車を北山車と被告車の間に挾んで停止した。

(五) 訴外北山の証言の信用性

訴外北山は、証人尋問期日において、ブレーキが利いて衝突時の速度は時速約五〇ないし六〇キロメートルであつたと供述している。

しかしながら、右供述は、速度計等で確認したものでなく、その正確性に強い疑問が残るのみならず、北山車が、西本車に衝突後、村上車及び花島車にも衝突し、なおも、転倒して右に回転しながら約七二・六メートル滑走してようやく停止したこと、訴外北山が西本車が停止していることを発見した際の北山車の速度が時速約一〇〇キロメートルであり、秒速では約二九メートルであるところ、訴外北山がブレーキを踏んだ地点から北山車が西本車に衝突した地点までは約二四メートルであり、湿潤していた時の道路状況下で、重量約一一トンを超え、時速約一〇〇キロメートルで走行していた北山車が、このような短距離を走行する間に、時速約一〇〇キロメートルから時速約五〇ないし六〇キロメートルに減速できたとは到底認められないこと、訴外北山は、捜査段階では右のようなことを全く供述していないことに照らしても、訴外北山の右供述部分は到底信用できるところではない。

2(一)  以上認定した事実によれば、被告二俣に、車間距離不保持、制限速度遵守義務違反、前方不注視の過失が認められ、雨の影響で湿潤していたという本件事故当時の道路状況下で、前方を走行する北山車との車間距離を約五五・一メートルしかとらずに、制限速度を超過した時速約一〇〇キロメートルで走行し、被告車をスリツプさせほとんど減速できないまま被告車を西本車に衝突させて訴外西本に重傷を負わせた被告二俣の責任は重大といえる。しかしながら、訴外北山にも、制限速度遵守義務違反、前方不注視の過失が認められることは明らかであり、被告二俣と同様に、雨の影響で湿潤していたという本件事故当時の道路状況下で、前方を走行する車両への注意を怠つたまま制限速度を超過した時速約一〇〇キロメートルで走行し、ほとんど減速できないまま北山車を西本車に衝突させて訴外西本に重傷を負わせた訴外北山の責任もまた重大である。しかも、訴外北山が、右のような注意義務を遵守してさえいれば、北山車が西本車に衝突することはなく、西本車のみならず、北山車も本件道路中央に停止する事態は生じず、本件事故も起こりえなかつたのであり、訴外北山は、一連の本件多重衝突事故の直接の引き金になつた事故を起こしたものである。本件事故の直接、かつ最も根幹の原因を作つた訴外北山の責任は極めて重大で、一連の衝突の最も重大な責任を負つていると言える。

したがつて、訴外北山の責任は、被告二俣の責任よりも相当程度重大と認められる。

(二)(1)  原告は、北山車は、時速五〇ないし六〇キロメートルに減速した状態で西本車に衝突したのに対して、被告車は、時速一〇〇キロメートルで西本車に衝突していること、北山車の衝突では、西本車には運転席部分に衝撃が加わつていないのに対して、被告車の衝突で西本車の運転席部分に衝撃が加えられたことから、訴外西本が重傷を負つたのは被告車の衝突によるものであるから、過失割合も、被告二俣が極めて大きいと主張している。

確かに、被告車は、時速約一〇〇キロメートルで進行中、道路が湿潤していた影響で、ブレーキがほとんど利かず、ほとんど減速できないまま横向きに停止していた西本車に衝突しており、その衝撃が甚大なものであつたことは容易に推認できる。しかしながら、北山車も、時速約一〇〇キロメートルで進行中、ほとんど減速できないまま、前方で停止していた西本車に衝突していることは前記認定のとおりであり、原告の主張は、まず、その前提を欠いている。そして、北山車は、西本車に衝突後、横転し、なおも、右に回転しながら約七二・六メートル滑走してようやく停止したこと、停止していた西本車は、北山車に衝突された後、約一一・九四メートル左前方に逸走し、左前方で停車していた川田車に衝突し、その後も約三二・一メートル逸走してようやく本件現場付近に停止したこと、衝突された川田車も約九・三一メートル後退していることに照らしても、北山車による西本車に対する衝突の衝撃が、相当強力であつたことも容易に推認できるところである。原告は、甲一一、一二をして、北山車の衝撃度より被告車の衝撃度の方が格段に大きいと主張するが、右各証拠は、訴外西本の受傷の原因が、北山車の衝撃度と被告車の衝撃度のいずれの影響が強いか不明としているに過ぎず、右各証拠をもつて、北山車の衝撃度より被告車の衝撃度の方が格段に大きいと認めることはできない。

(2) 確かに、北山車の衝突で、西本車の運転席付近に直接的な衝撃が加えられた形跡は窺えないが、被告車も西本車も左助手席付近に衝突しているのであり、被告車の衝突によつても西本車の運転席付近に直接的な衝撃は加えられていない。北山車が西本車の前方に停止し、北山車と被告車で西本車を挾む状態にしたからこそ、西本車の運転席付近に衝撃が加えられたと認められるのであり、被告車の責任のみが重大とは認められない。

(三)  その他、西本が負つた重度の傷害の原因が、もつぱら被告車の衝突の影響であり、北山車の影響は軽微であると推認できる証拠はなく、被告車の責任の方が極めて重大であるとの原告の主張は採用できない。

3  以上、認定してきたような本件事故の態様、訴外北山、被告二俣の双方の過失の態様に鑑みると、被告二俣と訴外北山の過失割合は、被告二俣が三割、訴外北山が七割と認めるのが相当である。そして、共同不法行為者間の負担部分は、各共同不法行為者の過失割合に応じて決まると解されるので、被告二俣(被告会社も同様)の負担部分は金三二〇二万〇六一二円(円未満切り捨て)と認められる。

二  自賠責保険金の扱いについて

1  原告が、訴外塩谷運輸の加入する原告から自賠責保険金二一二〇万円を充当し、被告会社の加入する訴外被告安田火災海上株式会社から自賠責保険金二一二〇万円の支払いを受けたことは当事者間に争いがない。

ところで、原告は、原告が弁済した訴外西本の損害額から、これらの合計四二四〇万円を控除した残額について、訴外北山と被告二俣の過失割合に応じて分割し、その差額について被告らが原告に対して求償できると主張している。

しかしながら、自賠責保険は責任保険であり、加入者の損害賠償債務を担保するものである。負担額を確定する前に自賠責保険金を控除すると、自賠責保険金は、負担割合に応じて相互の債務者の損害賠償債務を担保することになるから、責任保険の枠を超えてしまうことになり相当ではない。したがつて、自賠責保険金が支払われて、損害の一部がてん補されている場合には、共同不法行為者各自の過失割合に応じてそれぞれの負担部分を確定した後に、当該債務者の契約する自賠責保険金によつててん補された自賠責保険金を控除し、その残額の限度で求償できると解すべきである。

2  本件では、前記のとおり、被告二俣及び被告会社の負担部分は三二〇二万〇六一二円と認められるところ、原告は、被告会社の加入する訴外被告安田火災海上株式会社から自賠責保険金二一二〇円の支払いを受けているので、原告は、被告二俣及び被告会社に対して、その差額の一〇八二万〇六一二円を求償できると認められる。

三  遅延損害金について

共同不法行為における求償権は不当利得返還請求権と認められるので、履行の請求をした翌日から遅滞に陥ると解すべきところ、原告は、本訴前の平成五年一〇月一八日付の書面で、右書面到達後二週間以内に、求償債務を履行するよう催告し、右書面は、遅くとも同年一一月一日に到達しているから、同月一五日から、被告らの求償債務は遅滞に陥ると主張している。

しかしながら、甲一八によれば、原告が被告らに対して、到達後二週間以内に求償債務を履行するよう催告する旨が記載された平成五年一〇月一八日付の書面が存在することは認められるものの、右書面が遅くとも同年一一月一日に被告らに到達したと認めるに足りる証拠はない。そして、原告が、被告らに対し、本求償債務の履行を請求したと証拠上明確に認められるのは、本訴状においてであるから、結局、本訴状が送達された日の翌日である平成六年一〇月二〇日から被告の求償債務は遅滞に陥ると認められる。

第四結論

以上のとおり、原告の請求は、被告らに対して、各自、金一〇八二万〇六一二円及びこれに対する平成六年一〇月二〇日から支払済みまで年五分の割合による金員の支払いを求める限度で理由があるが、その余の請求は理由がない。

(裁判官 堺充廣)

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